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200冊の参考書を電子化した僕の自炊・PDF管理ワークフロー

約12分
200冊の参考書を電子化した僕の自炊・PDF管理ワークフロー

書籍の「自炊」とは、市販の紙の書籍を自分で裁断し、scansnapなどのドキュメントスキャナでPDFや画像形式に変換することで、電子書籍化してしまう作業のことです。

自宅にある大量の漫画や小説、参考書、技術書などをスキャンすれば、大幅にスペースを節約することができ、しかも本の劣化を防ぐことができます。
iPadやKindle FireなどのタブレットでこれらのPDFを持ち歩けば、持ち歩きたいのが分厚く重い本であっても、荷物を大幅に減らすことができ最高です。

そんな自炊の魅力に取り憑かれ、過去1年間で、数学や統計学の参考書を中心に大量にスキャン作業を行ってきた僕が、ワークフローやスキャナーの設定、またPDFの管理方法をまとめます。




まずは裁断!裁断機買うよりキンコーズに持って行こう

自炊作業は、本を買ってきて、専用の裁断機で断裁し、バラバラの紙にしてからスキャナーに突っ込む必要があります。


そのため、世の自炊ユーザーは、裁断機を自分で購入したり、scansnapやらEpsonのスキャナを購入し、機材を整える必要があるのです。
スキャナも3万円から5万円くらいしますし、裁断機もちゃんとしたのを買おうとすると、平気で2〜3万円くらいは掛かります。
単純に作業時間がもったいないことと、これらの機材を買い揃えなければならないことが、自炊の第一のハードルと言えるでしょう。

残念ながら、日本においては、スキャン作業を業者に代行してもらうことはNGとする裁判例があります(アメリカではAmazonから直接送るとPDFにしてくれる業者があり超便利)。
したがって、スキャン作業は自分でスキャナーを入手して行うしかないのが実情です。

この点、スキャン代行はダメでも、「書籍を裁断する」という行為については、代行がOKなのがポイントです。

数万円の裁断機を買って、しかも本を切る作業を自分でやるとなると、お金も時間ももったいないです。
インターネット上には、ダンボールに本を詰めて送ると全て裁断して返送してくれる業者がありますし、リアル店舗でも、キンコーズなどに持っていけば本を断裁してくれます。

インターネット上で申し込み郵送するタイプの裁断業者の相場は、だいたい1冊50〜100円で、プラス送料が掛かります。
これに対し、近所のキンコーズに「本の断裁をお願いしたいんですけど・・・」と持っていけば、1センチあたり100円で切ってもらえます。分厚い本だと、1冊200〜300円掛かってしまうのがデメリットですが。

私の場合、50冊〜100冊単位で、ハードカバーを含む大量の本を断裁したいときはネット上の裁断代行業者を利用しています。分厚い本をキンコーズで切ると高いので、十分に送料分も取り戻せると思います。
これに対し、2〜3冊程度をすぐに裁断したい場合には、近所のキンコーズに持って行って裁断してもらうのが気楽でおすすめです。

ドキュメントスキャナは必需品なので買うしかない

スキャンされた本を入手できたら、あとはスムーズに大量の紙をスキャンできるドキュメントスキャナに入れればいいだけです。

富士通のScanSnap iX1500や、エプソンのDS-570W、CanonのimageFORMULA DR-C240あたりが有名どころです。
私はEPSONのDS-570Wを利用していますが、デザイナーや写真家など色に半端ない拘りがあると行った事情がなければ、ぶっちゃけどれでも良いと思います。
ScanSnapの最新モデルには、液晶モニタが付属しているので、インターフェースとしては一番わかりやすいかもしれません。

EPSONのDS-570Wは、かれこれ1年は利用していますが、なんのトラブルもなく、大量の本をスキャンし続けてくれています。画像も良好で、iPad Pro 2018の高精細な液晶で見ても全く不足ありません。

スキャン時の画質設定はどうすればいいのか

スキャンを行う際に悩むポイントの一つは、どの程度高精細な画像を求めるか、そしてその代償としてどのくらいの時間が掛かることを許容するかという点です。

超高画質な設定にしてしまうと、スキャンにも非常に時間がかかります。1ページ1ページがゆーっくり出てきて、300ページの書籍などだと待っていられません。
しかも、スキャン後のPDFの容量も半端ではない大きさになります。DropboxやGoogle Driveなどのクラウドストレージにアップするのも一苦労でしょう。
一方で、画質を下げ過ぎてしまうと、iPadでページの一部を拡大して読もうとすると、画像が見苦しくぼやけてしまうということもあり得ます。

このトレードオフは、実際に自分がスキャンする本のジャンルなどにも寄ると思うので、各自の好みで決めていくべきものかと思いますが、目安として私の設定を共有しておきましょう。

前提として、私のスキャン対象の本は、文字がほとんどの参考書が大半です。
しかし、iPadでの読書がメインであるため、高精細な液晶で見ても綺麗で、かつ参考書の一部を拡大してApple Pencillで細かな書き込みをするときにも、美しい状態であってほしいと考えています。

こんなニーズの下で、1年ほどの間に200冊をコツコツスキャンした経験から至った結論は、次の通りです。


  1. カラー、グレースケール共に300dpiに設定
  2. 元画像は保存しておきつつ、スキャン後にJPEG miniという画像圧縮アプリで圧縮してPDFへ

ということにしています。

まず、参考書をカラーの300dpiでスキャンすると、1画像の容量は1.5MB弱程度になります。
これをPDFにするだけで、1ファイルあたり300MBを超えてくるため、クラウドストレージを用いて複数端末で同期したい身としてはちょっときつめです。
そのため、これ以上画質を上げることは諦めた、ということになります。

しかし、300dpi程度に設定しておけば、iPad ProでMAXまで拡大しても高精細が保たれる程度のクオリティになります。これだけあれば十分だという感覚です。
JPEG miniというブロガー御用達の画像圧縮アプリを使えば、ほとんど画質に変化なく、容量を半分程度に落とすこともできます。

一方、グレースケールで300dpiというのは、比較的贅沢をしている方だと思います。
漫画などではこれくらいに設定した方が良いかもしれませんが、文字ベースの小説や参考書ではもっと落としても良いと思います。
私は長年使う参考書もあることを考えると、将来にわたって高精細PDFを使えた方がいいだろうと思い、この設定にしています。

また、カラーでもグレースケールでも、300dpiなら、スキャナーもほぼ息付くことなくサクサクとスキャンを進めてくれます。時間効率は結構いいと思います。
これ以上の画質設定にすると、EPSONのDS-570Wでは非常にスキャンスピードが遅くなってしまいます。

スキャンをしたら画像補正で美しく!

スキャナーによっては、スキャン時に出力ファイルをPDFかJPEGかで選択できるようになっているものもあります。

私は、全ての本についてJPEGの画像ファイルを出力し、それを読みやすいように画像補正するアプリで補正をかけ、さらに画像容量の圧縮を行ってから、PDFに変換しています。
この作業は、快適に読書をする上で必須の工程だと思います。

MacアプリのXnConvertでシミや汚れを真っ白に補正!

自炊時の必須アプリは、間違いなくこのXnConvertと言えるでしょう。
XnConvertは大量の画像を取り込んで、それらに一括でコントラストの調整や明るさの調整を行うことができるアプリです。
明暗調整を始めたくさんの機能があるアプリではありますが、私が使う機能は1〜2個だけです。

書籍の自炊の上で最も重要なのは、黒点の強調と、余白を綺麗な白にすることの2点だと考えています。
特に古い本をスキャンすると、画像全体がぼんやり暗い感じになったり、ページの真ん中にだけ元の紙の黄色が現れてしまったりします。
その状態では読みにくいので、文字をくっきり見やすくし、背景の白を綺麗な白に変えていくわけです。

難しそうに聞こえますが、XnConvertならわずか2クリックでこの作業を実現できます。

実際にこの作業をやってみましょう。スキャンした画像で、元の印刷紙が黄色かったために、中央にその色の影が現れてしまったものです。

XnConvertに、この書籍全体を読み込ませた上で、「動作」というタブから、「レベル」というアクションを追加します。
ここで、「黒点」と「白点」を調整する機能を使うことができます。

黒点を上げていく(この場合0から110へ)と文字や図の輪郭などがハッキリ強調され、白点を下げていく(255から250へ)と写り込んだ影やシミ、薄い色の箇所を消していくことができます。

白点を下げすぎると、数学の本などだと図形のグレーの色ぬり部分が真っ白になってしまうので、注意しながら補正していきます。
すると、先ほどの画像が、次のように見違えるほど綺麗になりました。かつ、図形の塗りつぶし部分も消えてしまってはいません。

画像補正が済んだら画像の容量圧縮!

JPEGの画像を圧縮してくれるアプリは様々ありますが、圧縮効率を上げすぎると、画像がぼやけたり、明らかに見苦しくなってしまいます。
その点、元の画像の見栄えをできるだけ維持したまま、画像を圧縮することを売りにしているアプリも存在します。

JPEG miniは、画像圧縮のために利用しているブロガーも多いであろうアプリで、ほとんど違いがわからないのに、大幅に画像圧縮をしてくれます。

実際に、300dpiでカラースキャンし、XnConvertで補正した後の一冊分の画像をJPEG miniにドラッグ&ドロップすると・・・


およそ250ページの書籍で、もともと350MB近くあったものが、150MB近くまで圧縮されました。
実際に圧縮後の画像を見てみても、ほとんど違いがわからないほど綺麗です。

一度PDFにしてしまい、書き込みなどを入れていくと、後からこうした圧縮をしにくくなるので、是非ともこの段階で拘っておくことをお勧めします。

数百枚の画像を一気にPDFに変換

こうして準備ができた一冊分の書籍のスキャン画像を、JPEGなどの画像形式から、PDF形式へと変換する必要があります。

この場合、様々な方法がありますが、一番手軽なのは、Mac純正のプレビューアプリで全ての画像を開き、プリント画面からPDFに出力をすることです。
追加でアプリを入れることなく、Macに元から入っている機能だけで実現することができます。

しかしこれでは、印刷用の余白が微妙に入ったりすることがあり、拘る人にとっては若干気持ち悪いかもしれません。
そこで私は、Macの著名な文書管理アプリであるDevonthinkを利用して、大量の画像を一つのPDFにマージする作業を行なっています。

Devonthinkは有料アプリですが、この後で紹介する大量のPDFの管理と、iOS端末との同期にも非常に便利なので、大量に参考書や技術書をスキャンするつもりの人には特におすすめです。


Devonthinkのどのフォルダでもいいので画像を全て突っ込んで、右クリックから「Merge」を選べばPDFが出力されます。


これによって、PDFの各ページはもともとのJPEG画像そのままで出力されるため、スキャン時の余白等の設定をそのまま活かすことができます。

iPadで快適にPDF を読める・書き込める神アプリ

画像のPDFへの変換のところでちらっと登場したDEVONthinkですが、要はPDFやMarkdown, html, リッチテキストなどのあらゆる文書ファイルを、タグやラベルを使って快適に管理できるデータベースアプリです。

こちらの画像の左側がフォルダ階層で、数学の教科書をスキャンしたPDFを全てここに突っ込んでいます。
ここに入っているPDFは、コメントや手書きなどの注釈を自由に入れられ、蛍光ペン機能も利用可能です。
しかも、その注釈が、DropboxやiCloud、WebDAVなどを経由してiPhoneやiPadにも同期されます。

Devonthinkに自炊後のPDFを入れたのち、iPadで実際にそのPDFを開いたのが下の画像です。

このように、Apple Pencillも使って蛍光ペンを引いたり、書き込みを入れることができます。

DEVONthinkで大量のPDFを管理して、Dropboxを経由してiPadにも同期させ、出かけた先にも、図書館にも、出張先にも、常に自宅にある全ての本を持ち歩くことができ、しかもしおりをつけたり書き込みを入れたりも自由自在です。

これがまさに自炊の醍醐味と言えるのではないでしょうか。
自炊ユーザーの方は、まず自炊が可能な環境を作り上げたら、今度はPDF管理の方法に拘って見ると良いでしょう。
紙の利便性を超えることを実感できて初めて、自炊のために大量の時間とお金をかけた甲斐があるというものです。

Devonthinkは有料アプリなので、無料アプリがいいという人は、こちらの記事もチェックしてください。
無料で超絶便利!仕事・勉強に超使えるiPadのPDFアプリ
Devonthinkにも採用されているPDF編集機能の開発元が出している無料アプリで、本当に素晴らしい使い心地です。

自炊が快適すぎて紙の本は持ち歩けない体に

少し前まで、僕が学部生だった時には、授業の教科書と、自分で図書館で勉強したい参考書をリュックにれ、クソ分厚い本を5冊に加え、ノートPCまで持ち歩くという苦行としか思えないシーンが多くありました。

今でも、教科書と参考書を大量に持ち歩いている大学生や、小説や実用書をカバンに入れて持ち歩いている社会人も多いのではないでしょうか。

しかし、一度自炊の便利さを覚えてしまうと、これまでのそうした苦しみが一切なくなり、勉強や資格試験対策の効率がめちゃくちゃ向上するのではないかと思います。

出張先にも、KindleやiPadを一台持って行きさえすれば、自宅の本を全て読めるのです。
図書館にせっかく勉強をしに来たのに、一冊だけ文法書を忘れて、勉強がはかどらずに結局帰ってしまった・・・といった経験はないでしょうか?
自宅の本棚を持ち歩けば、もうそんな悲しみも起きることはありません。

芸術家でもなんでもないのにiPad ProやApple Pencilを買ってしまい、その便利さを持て余している・・・という人にもおすすめです。
iPadで自炊したPDFを読みながらApple Pencilで書き込んだメモが、iPhoneでもMacでも読めるという便利さは、何物にも代えがたいものです。

是非是非、まだ自炊をしたことのない人は、チャレンジしてみてください。




  • はじめまして。
    記事を拝見し、自炊しようと思いました。
    不器用なため、裁断・スキャンを業者にお願いし、PDFデータを業者より購入し、ipadprodで閲覧しようと考えています。
    業者にPDFファイルを作成してもらっても、ブログで紹介されているようなPDFに変換後の閲覧は同様に可能でしょうか。
    初心者のため、教えていただけるとありがたいです。
    どうぞよろしくお願い致します。

    • 日本ではスキャン作業の代行が違法とされているため、裁断までしか外注することができません・・・。
      最初からPDFで販売しているオライリーや技術評論社などでPDF書籍を購入すれば、この記事で紹介したのと同じようにアプリなどで閲覧できます。

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